人は「〇〇が欲しい」などの欲望があってもすぐに行動を起こそうとはしないのに対して、「〇〇を失う」などのリスクを感じると、それを防ぐための行動はすぐに起こすことが多いとされている。
損失回避の法則とマーケティング
マーケティングシーンにおいて損失回避の法則は、販売促進の施策に多く活用されている。「モノを買う」ことは、購入した後のこと(未来)の予測が必要であり、それは、”損”があるかもしれないという考えが生まれる。そこで、販売促進では以下のような心理誘導を狙う。
1)買うと損を回避・解消できる
もともと不満や不利益(損)がある状態を想定し、商品やサービスを利用することで、その損が解消できることをアピールする。
・誰もが逃れられない損失(老化など)を回避する商品やサービス
・ターゲット自身に今現在、損失があると気付かせるメッセージ
・定期購入者への永続割引き
2)買わなきゃ損
商品やサービスを使わなかった場合のデメリット(損)や、購入者の特典が限定であることなどをアピールする。
・今だけの特別価格、購入特典
・今しか買えない数量限定、期間限定販売
・ポイントなどの特典の権利失効
3)買っても損はしない
購入した時に満足できなかったり、失敗すること(損)を恐れる気持ちを払拭できるようにする。
・品質保証の返金システム
・無料のお試し期間
・初回限定価格
損失回避の法則をマーケティングに活用したコピー例
宝くじのコピー
(A)あなたもきっと当選者になれる
(B)あなたはすでに当選者かもしれない
(A)のコピーを(B)にコピーに変更したところ、大幅に売り上げが伸びた。
(A)のように得を求めるものよりも、(B)のようにすでにあるチャンスや利益を逃してしまうかもしれないという、失うリスクを感じさせるほうが行動を起こしやすいという例
損失回避の法則の留意点
損失回避の法則がマイナスに働いてしまう場面があることに注意する。割引の多用
人は、自分が購入しようとする商品やサービスに対し、「あの商品はいつもこのくらいの値段で買える」というような「参照価格(=自分なりの基準)」を持っている。
割引を常に行うと、ターゲットとなる消費者が低価格(=お得な価格)に慣れてしまい、「定価で買うと損をする」という心理が生まれてしまう。
損失を強調しすぎるとネガティブなイメージがつく
損失回避の法則を効かせるために「損失」「恐怖」「罪悪感」などを強調すると、メッセージにネガティブ表現が多くなり、商品やブランドのイメージを低下させる場合がある。
・「このサプリを飲まなければ将来必ず病気になります」
・「あなたは栄養不足で危険です」
・「加入しないと家族が路頭に迷います」
・「エコ商品を選ばなければあなたも環境破壊の加害者です」